キャリア教育が目指すところ
◆現代社会における課題
子どもたちが育つ社会環境の変化に加え,産業・経済の構造的変化,雇用の多様化・流動化等は, 子どもたち自らの将来のとらえ方にも大きな変化をもたらしています。子どもたちは,自分の将来を考えるのに役立つ理想とする大人のモデルが見つけにくく,自らの将来に向けて希望あふれる夢を描くことも容易ではなくなっています。
具体的には,次のような子どもの増加などがこれまでも指摘されてきています。
- 人間関係をうまく築くことができない
- 自分で意思決定できない
- 自己肯定感をもてない
- 将来に希望をもつことができない
今,子どもたちが「生きる力」を身に付け,社会の激しい変化に流されることなく,それぞれが直面するであろう様々な課題に柔軟かつたくましく対応し,社会人として自立していくことができるようにする教育が強く求められています。
◆目指すべき社会
文部科学大臣,厚生労働大臣,経済産業大臣,経済財政政策担当大臣の関係4閣僚からなる「若者自立・挑戦戦略会議」が,平成15年6月に「若者自立・挑戦プラン」にて,次の2つを目指すべき社会として掲げ,政府,地方自治体,教育界,産業界が一体となった取組が必要であるとしました。
- 若者が自らの可能性を高め,挑戦し,活躍できる夢のある社会
- 生涯にわたり,自立的な能力向上・発揮ができ,やり直しがきく社会
その後,平成18年には,内閣官房長官,農林水産大臣,少子化・男女共同参画担当大臣も加え,「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン(改訂)」が策定され,キャリア教育のさらなる充実を図ることとしました。
キャリア教育で育成すべき力
◆社会的・職業的自立,学校から社会・職業への円滑な移行に必要な力の要素
中央教育審議会答申(平成23年1月31日;今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について)において、社会的・職業的自立,学校から社会・職業への円滑な移行に必要な力の要素として,次のことが必要であると指摘しています。
- 基礎的・汎用的能力
- 基礎的・基本的な知識・技能
- 意欲・態度及び価値観
- 論理的思考力,創造力
- 専門的な知識・技能
特に,「基礎的・汎用的能力」は,「人間関係形成・社会形成能力」,「自己理解・自己管理能力」,「課題対応能力」,「キャリアプランニング能力」の4つの能力によって構成されます。
今日の若者の「勤労観・職業観」に,ある種の危うさがあることを指摘する声は少なくありません。職業の世界の実際を把握する機会を与えられず,自己の在り方を職業生活や社会生活とのトータルな関係で考えることができないままに,将来への希望や自信,働くことへの意欲が持てないでいる若者の姿が見られます。「自分なりの勤労観・職業観」という多様性を大切にしながらも,そこに共通する土台として,次のような「望ましさ」を備えたものを目指すことが求められます。
◆望ましい「勤労観・職業観」
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- 職業には貴賤がないこと
- 職務遂行には規範の遵守や責任が伴うこと
- どのような職業であれ,職業には生計を維持するだけでなく,それを通して自己の能力・適性を発揮し,社会の一員としての役割を果たすという意義があること
- 一人一人が自己及びその個性をかけがえのない価値あるものとする自覚
- 自己と働くこと及びその関係についての総合的な検討を通した,勤労・職業に対する自分なりの備え
- 将来の夢や希望を目指して取り組もうとする意欲的な態度
まとめ
キャリア教育とは,簡単に言うと,社会が子どもたちに対して次のような取組を行うことです。
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- 子どもたちが,自分の将来を考えるのに役立つ理想とする大人のモデルを見つけられるよう手助けしてあげること
- 自らの将来に向けて希望あふれる夢を描けるように手助けしてあげること
- 自己の在り方を職業生活や社会生活とのトータルな関係で考え,働くことへの意欲が持てるよう職業の世界の実際を把握する機会を与えてあげること